佐藤天彦名人がタイトルの初防衛を達成しました。
https://www.shogi.or.jp/news/2017/06/75_3.html
天彦ファンの僕としてはこれほど嬉しいニュースはありません。仕事の関係で防衛の瞬間を見ることは出来なかったのですが、ツイッターですぐに防衛の知らせが流れてきて、とても感動しました。
初戦で黒星からスタートしたものの、4局目から立て直し、そこからはいつも通りの名人の強さを発揮していたと思います。僕は4,5局目は特に注目して中継を見ていました。天彦名人と対局者の稲葉八段との2人で、僕をどこか遠いところまで連れて行ってくれているような感覚にさえなりました。
そんな天彦さんですが、先日の電王戦にて、将棋AIのPonanzaに敗れました。
https://www.shogi.or.jp/news/2017/05/2ponanza2.html
人間的にはとても強い天彦名人ですが、コンピュータ将棋には敗れてしまいました。
今回の電王戦で人間の対戦相手となったPonanzaはこれまでの電王戦でも人間を何度も負かしています。Ponanzaは人間との対局以外にも、世界コンピュータ将棋選手権という、将棋AI同士の最強決定戦においても何度も優勝を果たしています。
しかし、最強と思われたPonanzaも、先日の世界コンピュータ将棋選手権にて、elmoという将棋AIに敗れました。さらに強い将棋AIが現れたということです。人間が将棋でコンピュータに勝つのはこれまで以上に厳しくなってきたとも言えます。
電王戦が正式に閉幕したことからも、「コンピュータVS人間」という括りの将棋はひとまず役目を終えたように思えます。これから先も恐らく将棋においてはコンピュータが人間を上回っていくことでしょう。
では、これで人間の将棋は終わりなのでしょうか。
この問いに対して、将棋ファンのほぼ100%がNOと答えるに違いありません。僕もそう思います。人間の指す将棋にはまだまだ価値がある。
コンピュータも人間も、たしかに勝つために将棋を指すという点では共通ですが、プロセスが異なります。
コンピュータは相手に勝つために将棋の最適解を導き出すために作られています。なので、必然的にその指し筋は最新形になっていきます。大昔に指されていたような定跡の中には、コンピュータ的には疑問点の多いものもあるでしょう。そうした戦法をコンピュータが指す可能性は基本的に無いということです。
しかし、人間にはそれが出来る。昔の定跡を選択することが出来るのです。つい先日行われた棋聖戦第1局がその象徴と言っても良いでしょう。挑戦者の斎藤七段と羽生棋聖が作り上げた棋譜は大昔に指されていた矢倉。僕はこの対局に芸術性を感じました。コンピュータとの対局では見ることの出来ない古典的な棋譜を現代の公式戦で再現できることは、まさしく人間が指す将棋の価値であると思います。
このように、近年著しい成長を見せるAIとの付き合い方を考えていかなければならない現代に、人間とコンピュータが対峙する状況を作り出すことは、人間特有の価値を見出すためにも、意味のあることであったと言えます。一人の将棋ファンとして、心の底から感動しています。
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